のりさんの研究室

上越教育大学 榊原範久のブログです。

妙高市情報部会研修会

GIGAスクール構想に伴い、市内12小中学校で1人1台の端末と大型ティスプレイの設置、大容量の高速インターネット接続が可能になって、授業は大きく変化しています。

皆さんの学校の学習環境はどのように変化したでしょうか。

 

今日は妙高市の情報部会の研修会に参加しました。
小学3年生の社会科の授業で、スーパーマーケットの学習単元です。


授業では主に「ロイロノート・スクール」を使ってスーパーマーケットで調べた記録と写真を共有していました。

【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド


スーパーマーケットの工夫が,客とスーパー側にそれぞれどのようなメリットをもたらしているのかを多面的に考えて、ロイロノート・スクールを使ってプレゼンしていくという流れでした。


今日の授業を振り返ると、細かな良い部分はたくさんあったのですが、まとめて言うならば、「ICTのメリットとデメリットを考慮した上で、ICTと黒板の共存できていた」ということです。


例えば「学習のめあて」や「学習の方法」、「まとめ」、「主題の写真」などは黒板に示したり板書したりして、授業中に常に子どもたちが確認できるようにしていました。またノートに記述することとタブレットに記述することも適切に分けて行っていました。


一方で、「学習者の意見の共有」や「プレゼンの作成・発表」はICTを使って行っていました。使用を始めて3ヶ月の3年生が,かな入力のタイピングを行っていたのは日頃からの積み重ねの証です。


既存の学習ツールとICTの「共存」のイメージを,教師がどのように授業デザインに描けるかが重要です。学習記録の共有や保存などICTのメリットが際立つ部分で使用することですね。


授業後の協議会は活発な議論がなされました。さすが情報主任の研修会です。

また,M1の院生を帯同して行きましたが,彼らが協議会で積極的に発言していた姿が見られたことは個人的に嬉しかったです。

情報主任の皆さんがやる気になって帰っていかれたようです。

GIGAスクール構想で整備された学習環境を最大限活かせるように今後も研修会や講演を通じて伝えていきたいと思います。

新しい教科書に、新しい教材

新しい年度が始まりました。

期待に胸を膨らませ、今年度はどうやって授業をしていこうか、と考えられている先生も多いことと思います。


中学校は新しい学習指導要領が全面実施となり、教科書が一新されます。

 

それに伴って授業を「主体的・対話的で、深い学び」に変化させていく必要があります。

 

新しい教科書には、新しい教材が必要です。新しい学習指導要領の内容を反映した教材が望ましいです。

 

本日から、私が監修した教材(公民、歴史、地理)の教師用見本が配布されます。

 

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日本文教出版の教科書をご採用いただいている自治体の全中学校に入ります。

 

教材の本誌は問題を厳選しています。教師用の付録には、私が作成した毎時間分の授業ワークシートが付いてきます。その他にもこの付録には魅力的な教材、素材が満載です。

 

ぜひ、手に取って、検討いただければと思います。

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中有学校社会科教材 秀学社「研究ノート」

 
中学校社会科の学校図書教材を監修させていただきました。
 
秀学社さんより、「研究ノート」(歴史1,歴史2・3,地理1,地理2,公民)のタイトルで、4月に5冊発刊します。
 
日本文教出版(日文)の中学社会科教科書の完全準拠版です。
完全準拠版の教材とは、教科書で使用されている図版、図表、本文を使用する権利を有して作成した教材です。
 
日本文教出版の教科書を採用いただいている先生方・生徒さんたちにとって、最高の教材に仕上がったと思います。
 
教科書を理解するには最善の教材となっています。家庭学習の教材としても、授業の教材としても、確認テストとしても使える仕様です。
 
生徒の視点からも教師の視点から使いやすさ、学びの効率、アクティブ・ラーニングの実現を追求しました。新学習指導要領に合わせています。
 
愛知県で中学校社会科教員をしていた時、教材作りに命をかけてきた(ちょっと言い過ぎ…)自分として、当時の実践力と、大学での研究の知見を形にしました。
 
写真の、右が次年度からの採用される新教科書の表紙デザインです。
左が今回作成した教材「研究ノート」の表紙デザインです。
教材の中に教科書が!
 

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「研究ノート」の表紙
教材自体の内容も充実しているのですが、学年で本教材をご採用いただいた先生への特典がもの凄いです。
その内容については、またお伝えします。
秀学社さんの以下のホームページでも確認いただけます。
新年度の教材採用の際に、ご検討ください。4月に教材会社から教師用見本の供給が始まります。

榊原研究室のHP

ゼミ生が研究室のホームページの運営をしています。

毎週の院生ゼミ・学部ゼミの活動の感想やその活動の写真が掲載されています。

彼らが協働の中で学ぶ様子が分かります。

 

 

sakakibara-lab.jimdofree.com

 

2年前、5名で始まった研究室ですが、今では21名になりました。

本当にゼミ生に恵まれていると思っています。

明るく、元気で、ふざけもあり、それでいてやる時はやる、メリハリのあるメンバーです。

 

本コースは教員ごとのゼミ生の定員を設けていません。

学生が希望するアドバイザーを選択することができます。

 

私は院生や学部生がゼミ選択をする時にこう言います。

「うちのゼミは厳しいよ。」

「研究を頑張るゼミだよ。」

「研修会、学会、論文、全部欲張ってやっていくよ。」

 

こう言う話をすると、多くの学生は、苦笑いをします。

 

しかし、中には真剣な表情になって、

「知っています。だから来ました。」

「もともと榊原ゼミの一択なので。」

 

と言う人がいます。そんな奇特?な人たちが集まったのが今の榊原ゼミです。

 

私は「協働」することの価値や効果を信じています。

仲間が切磋琢磨し合う環境をつくるため、頑張る仲間を肯定する文化と、学年問わず議論をクリティカルに行う文化を醸成しています。

その中でのゼミ生同士の「協働」によって生み出される研究活動はレベルが高いです。

もちろん、アドバイザーによる個人指導もしっかり行っています。

ゼミ生は週に一度、私と「個人ゼミ」を行う権利を持っています。希望制ですので、やるかやらないかは自由です。

 

ゼミ生が作る研究室のホームページを見ていると、彼らの充実具体が分かります。

もし、ゼミの活動に興味ある方は連絡をください。ゼミの見学や榊原との面談も行っています。連絡先は、上記のホームページにあります。

 

卒業研究発表会

学部4年生の卒業研究発表会が行われ、5名が発表しました。

 

先週、ゼミでリハーサルを行ってから一週間がたち、自主的に何度も集まって、リハーサルを繰り返し、修正を重ねたと聞きました。

 

今日の発表では、スライドの視覚的工夫や発表の態度が格段に良くなっていました。

やはりそのような主体的なメンバーの意識が集団を高めるのだと思います。

 

全体ゼミでも議論できるし、学年単位でも議論できる、院生とも議論できる、というどのような人たちとも関われて、学び合える、そんな雰囲気が今のゼミにはあります。

 

私の研究指導が優れているとは思いません。

しかし、ゼミの研究レベルは私が指導するより高いレベルに成長していると感じます。

これはなぜでしょう。

 

それは私が指導することは成長のきっかけの一つになっていますが、彼らがチームでお互いの課題を共有し、自分なりの答えを出して改善していくからではないかと感じます。

論文などもお互いにチェックしてコメントし合って修正していきます。

 

教員の役割はやはりゼミの文化を含めた「環境」を整えることだと感じます。

 

そんなことを言いながら、自分の研究指導力を高めていかなければと自戒します。

 

今日の発表会では、それぞれの研究に対する思いが凝縮された卒業研究発表になりました。
zoomでの参観でしたが、発表する姿を画面で見ながら感動しました。

また、学部2年生、3年生も活発に質疑応答に参加していて、聴く側の主体的な姿勢も見られました。

 

彼らは4月から小学校教員として社会に出ていきます。

これからも研究室で学んだ研究力・実践力を生かして、「学び続ける教師」であってほしいと思います。

 

【ゼミ生の卒業研究 発表題目】
・小学校国語科における意見文産出の際に書き分けを意識させる授業の開発と検討
・小学校高学年における SNS 上でのコミュニケーションスキルを醸成する授業の開発と評価
・話し合い活動におけるアサーショントレーニングを用いた 批判的思考態度の表出判断に関する研究
・児童の居場所づくりのために担任教諭が日常的に行っている働きかけについての事例的研究―担任教諭の参与観察を通して―
メタ認知的活動を促進する振り返りシートの開発 ―小学校高学年における振り返り活動の効果―

先輩からの置き土産

今月の学部ゼミでは、3年生による卒業研究に関する「問題の所在」の発表が行われています。


3年生は20本以上の論文を読み、自分のしたい研究のイメージをフォーカスさせる内容でプレゼンしています。

 

発表を聴いて、私としては3年生のこの時期なら満足いく内容だなあと、後でニコニコ聴いていたけれど、4年生は容赦なしです。


「参与観察するだけでこの課題は明らかにできるのか。」

「研究のX軸が複数入っているかな。」

「〇〇の定義が述べられてないから議論できない。」

とバッサリ。

なんだか自分の院生時代の姿が重なります(^◇^;)

 

ゼミでは

「議論はクリティカルな姿勢で。ゼミが終わったらきれいさっぱり」

を言い聞かせています。

 

上のような発言が出ても決して険悪な雰囲気にはなりません。

 

「個人」を批判しているのではなく、あくまで個人の「論」を批判的に捉えて議論するという前提をいつも指導しています。

 

この「クリティカル」という言葉はよく間違えて捉えられます。

日本語で言う「批判的」、ネガティブで攻撃的なイメージで考えていません。

自分の意見にも反省的な思考を向け、根拠を重視しているか、推論の過程は正しいか、その上で相手の意見の問題点を指摘することが「クリティカルな思考」だとしています。

Ennis(1987)*のクリティカル・シンキング(批判的思考)の定義から引用しています。

 

4年生の5人は卒論を完成させ、うち3人は大学の紀要論文を投稿しています。
これまで身につけた研究の力をゼミに置き土産のように、残していってくれているようです。


また、今日の収穫は2年生の発言が増えてきたこと。

今年度のゼミはあとわずかですが、最後まで先輩から多くを得てもらいたいです。

 

*Ennis,R.H.(1987) A Taxonomy of Critical Thinking Dispositions and Abilities. In J.B. Baron & R.J. Sternberg (Eds.),Teaching Thinking Skills : Theory and Practice. W.H.Freeman and Company, New York,pp.9-26.

学校支援プロジェクト 遠隔授業実践

学校支援プロジェクトがいよいよ終わりに近づいてきました。

 

学校支援プロジェクトとは,上越教育大学の教職大学院が行っている学校実習の名称です。

院生たちは後期の150時間を連携協力校で実践を行います。

www.juen.ac.jp

 

榊原研究室で、院生たちに与えているミッションは、

「学校課題の解決の過程を通じて,教員として必要な資質・能力を身につけ,授業実践の中で個人研究を行う。」

ことです。

 

今日は「遠隔協調学習」を個人研究のテーマにしているM2のゼミ生が授業実践を行いました。

 

さて、「遠隔学習」を体験したことがありますか。

遠隔学習は教員の立場からしても、子どもの立場からしてもハードルは高いです。

文科省は遠隔学習を推奨していますが、学校現場でどんどん拡がっているかというと、そうではありません。

それはなぜでしょう。


私は実践経験者と研究者の両方の立場から、テレビ会議システムのみを使用した遠隔には限界があると思っています。

 

過去のテレビ会議システムのみを使用した失敗実践を挙げると
・代表者が前に出てきて発表

    ↓

・少しの沈黙の後、相手校の代表者が質問

    ↓

・また少しの沈黙の後、こちら側で誰が発表するかコソコソなすり付け合い

    ↓

・ようやく決まり、起立して小さめの声の返答

    ↓

・そして、理解されていないであろう相手校からとりあえずの『ありがとうございました』」

このような具合です。想像できますよね。

 

「ぎこちないキャッチボール」のような遠隔を解消するため、今回は、一人一台のタブレット端末を同期型のシステムで繋いで、遠隔協調学習を行いました。

2校の児童のタブレット画面は常に同期されています。

 

5年生算数の面積の単元での実践です。
2校の児童はタブレット上に四角形の面積を様々な解法で求積していきます。そして、友達の解法を相互に参照し、より優れた解法を学んでいきます。途中わからないことがあれば、テレビ会議システムを介して、相互に質問し合っていました。


今回で3回目の遠隔というのもあり、だいぶ心の壁がなくなって、まるで一つの教室で学んでいるようでした。

 

相手校は、ひとクラス4名の小規模校です。

幼少の頃から固定されたメンバーでずっと学習してきたという話を聞きました。

今日の遠隔協調学習では、学校の枠を超えて、学び合う姿がありました。

 

今日の授業者はゼミのM2院生です。これで遠隔授業実践は5回目です。

GIGAスクール構想の時代ですから、こんな実践経験をして、現場に出ていくっていうのもいいなと思いながら、後ろから微笑ましく参観していました。

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