教育の変革を担う中堅教員と次世代リーダーの力
本年度から教職員支援機構(NITS)の「中堅教員・次世代リーダー教員研修」の講師を担当しています。今回は「新しい学びの推進」というテーマで行いました。
全国から145名の先生方が参加され、会場は熱気に包まれていました。
変化の激しい社会を生きる子どもたちに必要な力とは何か。個別最適な学びと協働的な学びをどうデザインするか。GIGAのデジタル学習基盤をどう活かすか。
そんな話をしながら、グループディスカッションでフロアに話を振ると、参加者の皆さんのギアが一気に上がりました。
一人ひとりが真剣に考え、語り合う姿に、これからの教育を支える中堅教員、次世代リーダーの底力を感じました。彼らが本気になったら、結構大きな力になると思います。
この出会いが、学校現場の変革の火種となることを願っています。ただ、変革を起こすには仲間が必要です。現任校に帰った後、この学びを共有して一緒に動いてくれる仲間を見つけることが最初のミッションです。
自分を含めて3人。新しい風を吹かせていくために最低限必要な人数です。
1人で志を遂げることは難しい世の中です。
私にも同志と言える研究者仲間がいます。志を同じくして研究活動、教育活動に取り組んでくれる仲間がいることは、新しい取り組みを進める上で非常に重要な要素です。
今回のNITSの研修はアツかったです。
参加の皆さんのこれからの進化を楽しみにしています。
生成AI×義務教育──高知県でのキックオフ研修より
今年度、高知県教育委員会では「対話型AIを活用した学校支援実証研究事業」がスタートしました。本日はその第1回キックオフ研修会にて、講演をさせていただきました。
高知県内の実証研究校を支援する市町教育委員会の担当者、実戦研究校の管理職や代表者の方々に向けてお話しました。
学校や教育委員会から生成AIに関する講演依頼をいただく際に共通して感じるのは、「実際に授業や校務でどう使えばいいのか?」という強い関心です。そのニーズ、とてもよくわかります。「得体の知れない生成AIが教室に現れたら、どう対応すればいいのか?」という不安、ごもっともです。
しかし、すでに文部科学省のパイロット事業等を通して、授業や校務での活用例は蓄積されています。まずは、その成果を参考にすることをお勧めします。
私が今日、あらためてお伝えしたかったのは、「義務教育段階でなぜ生成AIの活用が求められるようになってきたのか?」という点です。
社会がAIと共に動き出している今、子どもたちがその未来を主体的に生き抜くためには、生成AIを使いこなす力だけでは不十分です。それをどう使うべきか判断する力の育成こそが、学校教育の使命であり、生成AIを取り扱う教育的意義だと考えています。
そのためには以下のような視点が導入前の教員研修でしっかり共有されている必要があります:
1.これからの社会におけるAIの重要性の理解
2.学校で生成AIを使う明確な目的の設定(教育的文脈の設計)
3.教職員・児童生徒双方のAIリテラシーの育成
4.情報倫理・個人情報保護・著作権に関する基本知識の徹底
これらを踏まえずにツールだけを導入してしまうと、「超便利な生成AI様が突然教室に降臨した」ような誤解が広がってしまいかねません。
だからこそ、導入の初期段階でこそ、教育的な意味づけの共有が不可欠なのだと、今日も強く感じました。
次期『新潟県教育振興基本計画』(R8–R15)の策定へ向けて
県庁で会議に参加しました。
議題は、「次期『新潟県教育振興基本計画』(R8–R15)の策定について」でした。
制度や財源の制約を踏まえつつ、県の教育に熱を宿す仕組みを探る対話が続きました。
私は大学人の立場から「教育の力で人口減にどう対応できるか」をテーマのひとつとして考えています。新潟県は、1997年ピーク249.2万人→2021年217.7万人→2045年推計169.9万人(▲32%)と推計されています。これは自然減+社会減のダブルパンチが要因です。人口増を望む政策というよりは、IターンUターンを含めた人口循環の仕組みづくりへ舵を切ることが必要です。
また、県内大学への進学率の低迷や県内大学卒業後の県外就職の割合が高いというのもあり、学業・就職を理由にした若年層の転出超過が恒常化しているのが課題です。
その解決は容易ではないですが、やはり「繋がり」がキーワードなのだと思います。人と人の繋がりが地域を大切にして、そこに根を下ろす人を長期的な視点で育てることが重要なのでしょう。
また、別の観点として、頑張る学校の先生たちを支援したいというのが私のテーマです。「幸せな先生が増えれば、幸せな子どもがどんどん増える」と本気で思っています。そのために教員の多忙化解消や教員が繋がる学びのコミュニティの構築、ICTの利活用の促進などの観点から意見を述べました。とりわけ教員の生成AI活用の促進は計画にも盛り込まれるようにしたいです。
若い世代が「ここで学びたい」「このまちで暮らしたい」と感じられるような教育環境づくりに、大学人としてできることを提案していきたいと思います。
特別支援学校でもICT研修
昨日、新潟県立高田特別支援学校で教員研修を担当しました。
私にとって、特別支援学校単独での研修は初です。
教員は100名近く所属されていると聞いていました。
メイン会場から初等部・中等部へZoomで中継しながらの実施でした。
「学校DX」や「ICT活用」といった言葉に対し、特別支援学校の先生の中には「もっと大切なことがあるのでは」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、社会の変化は子どもたちに等しく訪れています。
情報やサービスはますます抽象化・デジタル化され、見えづらくなっています。
だからこそ、ICTは特別支援学校においても、子どもたちの「わかる」「できる」を支えるための「できる状況づくり」のツールとして重要だと感じます。そして、ICTは生活の基盤を支えるツールの一つになっていきます。
ICTは目的ではなく手段。
人との関係性や温もりが何より大切な特別支援の現場だからこそ、無理のない形で、ICTとどう付き合っていくかを模索していく必要があります。
そして、卒業後の社会でも、子どもたちがデジタルと共に生きていける力を育てていくこと。
それが私たちの大切な役割だと思いました。
特別支援学校でのICT研修と聞くと珍しいと思われるかもしれません。
そのような中でも、管理職の先生をはじめ、情報部の先生方がこのような企画を取り入れていくところが素敵だなと感じました。
帰り際に「これからもぜひ学校支援に入っていただけると」といただきましたので、また訪問をする約束をしました。
次にお会いするのが楽しみです。
GIGAスクール構想の進捗の成果と課題
『日本教育工学会論文誌』Vol.49‑1 が手元に届きました。
本号には拙稿「GIGAスクール構想の進捗における成果や課題に関する教職経験に基づく教員の意識」とともに、ゼミ修了生の論文「共生体育態度の醸成を目指したアドボカシーを促す学習教材の開発と評価」が掲載されています。
いずれの論文も J‑STAGE で公開されています。ご関心をお持ちの方は題名で検索し、ぜひお目通しいただけたら幸いです!一番下にリンクを貼っています。
【拙稿の概要】
・公立小中学校・特別支援学校の教員289名を対象に調査を実施し、ベテラン層ほど成果を強く実感し、中堅層ほど課題を認識している実態を明らかにしました。
・自由記述の計量テキスト分析では、成果語として「タブレット端末」「活用」「学習」、課題語として「ルール」「情報モラル」「差」が共通して抽出されました。
・教職経験による意識差が縮小しつつある一方、自由記述の分析からはベテラン群内部でICT活用能力に対する自己評価のばらつきが見られ、一部に課題を自覚する記述も確認されました。
・これらの結果は、GIGAスクール構想が一定の成果を上げていることを示すとともに、経験年数が長い教員へのフォローアップの必要性を示唆しています。
GIGAスクール構想は着実に進歩、進展していることを本論文のデータ分析と考察を通して実感しました。とりわけ本研究は、リーディングDXスクールなど先進的な学校の教員ではなく、一般的な学校を対象にした研究であることに着目していただきたいです。若手群とベテラン群はGIGAスクール構想の課題よりも成果を強く感じています。中堅群は課題の意識の方が数値的にはたかったです。これは所属学校において中堅群が生徒指導主事や研究主任等の責任ある立場についている方が多く、問題意識も強いのかと推察しています(これは本論文の内容外のつぶやきです)。
私が一番着目したのは、ベテラン群の変化です。過去の研究では、ベテラン群は授業におけるICT活用に否定的であったり苦手意識があったりする報告が上がっています(櫻井ほか2011)。しかし、GIGAスクール構想の進捗(データ取得時は約3年経過時点)によって、授業中に積極的に取り入れる姿勢や、ICT活用の成果を実感している声が多く見られました。ただ、ベテラン群の中で格差が広がってきてしまっていることを課題点として報告しています。
【ゼミ生の論文の概要】
・小学校5年生のポートボール単元で、アドボカシーを促すルーブリック付き振り返りシートを開発し、その効果を検証しました。
・前後比較の結果、リーダーシップ因子が向上し、過度な勝利志向が有意に低減しました(p<.05)。
・振り返り記述と話し合いの分析から、代弁通訳・理解促進・エンパワメントの三観点でアドボカシーが自然に表出したことが確認されています。
私は、学校教育における体育科の今後目指していくべき方向性として「共生体育」という考え方を強く支持します。誰もが体を動かす楽しさを享受し、みんなでアドボカシーを促して、高め合える体育科。素敵だと思いませんか。
年度はじめの教員研修
愛知県の常滑市立南陵中学校で教員研修をしてきました。
今年度の学校の現職教育として、重点的に授業改善に取り組みたいということで研修依頼をいただきました。
かつて中学校に勤めていた者として、4月第1週の中学校の忙しさはよく知っています。
この時期に2時間に及ぶ教員研修を入れるのは、正直申し訳ないというか大丈夫かなという気持ちになります。
一度は
「4月の第1週ではなく、落ち着いた頃、たとえば7月とか夏休みとかの研修でも良いと思いますよ。」
と伝えたところ、
「年度が始まる前にやることに意味があると思っています。」
と力強い校長先生のお言葉。かなりの本気度を感じ、お引き受けする運びになりました。
しかし、研修を始めるとその不安は吹き飛びました。
四役をはじめ、教員の皆さんも(もちろん全員ではないかもしらませんが)とても意欲的に研修に取り組んでくれました。
とりわけ若手教員の皆さんの熱意が素晴らしく、年度当初に授業のあり方について熱心に語り合う姿がありました。そんな若手に対して中堅・ベテランの皆さんが助言したり、話を聞き出したりする姿がありました。彼らの貪欲に学ぼうとする意識が素晴らしかったです。
研修後に職員室へ戻ってから、研修の内容に関わる話が途切れなかったと聞き、嬉しく思いました。
校長先生の素晴らしいリーダーシップや職員への温かなフィードバックによって確保された心理的安全性のもと、若手から中堅教員が挑戦的に取り組める環境がありました。この中学校はうまく回っているんだろうなと感じました。授業改革は最初からうまくいくことはありませんが、継続していれば必ず形になっていきます。
これからの進化が楽しみです。
お勧めできませんが、お勧めしたい4月第1週の研修、です笑

日本教育工学会2025春季全国大会
日本教育工学会春季全国大会に参加しました。
教育工学研究を第一線で牽引する研究者や現場の先生方、学生の皆さんの発表を聞けるこの機会は、本当に貴重です。運営の皆さんにも感謝です。
クロージングセレモニーで、嬉しいニュースがありました。榊原研究室の学4の羽田野汐音さんが、学生セッション優秀発表賞をいただきました🏆学生の成長と成果が一番嬉しいです。
受賞も嬉しいですが、今回は榊原研究室最多の6件の研究を発表できたこと、これが何よりです。「みんなほんとに素晴らしい発表だった!」と1人1人を労いたいです。
6件の発表の際には、学生たちの素敵な光景が見られました。
それは、定期的に合同ゼミを行なっている信州大学の佐藤研究室の学生たちも集まってくれたことです。そのことはとても心強かったと思います。また、榊原研も自然と佐藤研の学生の発表を応援しにいくというこの学生たちの関係性。素敵だなと思います。
初の学会発表の舞台でも、知った顔がフロアにいてくれることは安心です。それが自然と堂々とした良い発表につながったのではないでしょうか。
学会は、最初のうちは足を運ぶのが億劫です。
その理由の一つに「知り合いがいないから」というのがあります。
学会に行けば、知ってる顔に会える、新しい情報が得られる、自分の成果を伝えられる、そして全国に仲間が増える、こうなってきたら学びはもっと楽しくなります。
「参加の度合いを高めることがまず大切」これは私がゼミでよく学生たちに話すことです。
参加の度合いが高くなると、深く学べるようになり、次第に力がついてきます。
逆に力量の高い人で参加の度合いが低い人はどんなジャンルでもほとんどいないのではないでしょうか。
参加した人だけが、そして参加の度合いを高く臨んだ人が、力をつけていくことができるのですね。
今回の学会参加も収穫の多いものとなりました。
発表のいくつかは投稿論文へと今後作業を進めていきます。
今回、研究を構築していく上で他大学の先生にもたくさんご指導いただきました。ありがとうございます。
【榊原研究室発表一覧】
○飯田 翔大,中川 哲,榊原 範久:生成AI が作成した教材を現職教員はどう評価するか.
○伊勢 琴子,佐藤 真大,榊原 範久:オンラインホワイトボードとマルチアングル映像を活用した遠隔授業研究の検証.
○加藤 咲希,木村 明憲,榊原 範久:小学校低学年の自己調整学習における情動調整方略を取り入れた学習支援ツールの開発.
○北村 優介,多々納 春樹,佐藤 和紀,榊原 範久:統計的リテラシーにおける批判的思考態度の育成を目指した学習教材の開発と評価.
○高橋 洋樹,榊原 範久:ジョブ・クラフティングの視点を取り入れた振り返り活動が主体的に学習に取り組む態度へ及ぼす効果の研究.
○羽田野 汐音,片桐 広太,榊原 範久:小学校高学年リズムダンスにおける動画を組み込んだルーブリック教材の開発と評価.


