上越教育大学教職大学院のゼミ生の投稿論文が、日本教育工学会論文誌50巻1号に掲載されました。本日、手元に雑誌が届きました。今号は2編の論文が掲載されています。
1編は飯田翔大さんと中川哲教授との共著です。筆頭著者の飯田さんは、在学の2年間で日本教育メディア学会の論文と併せて、フルペーパーが2編掲載されたことになります。
本論文をごく簡単に要約すると「生成AIで作成されたワークシート教材をベテランの教員はどう評価するか」について明らかにした研究です。本研究の主な知見は「生成AIは、知識や技能の習得を目的とした内容の教材を作成できる。しかし学習者の学習意欲を引き出すような工夫を教材に反映できていない」ということでした。
つまり、ベテラン教員(ヒト)は、授業の進捗とともに学習者の学習意欲を手当てしながら学習意欲を高める工夫を教材に施していくのですが、生成AIで教材を作成すると、どうしても意欲面のフォローが不足し、平らな印象の教材になってしまう、といった意味合いです。
これはまさに生成AI時代のヒト独自のできることだと感じます。知識理解面の補完は、生成AIでも可能。しかし、学習者の知識背景や学習意欲の移り変わりを想定して、その意欲を維持したり、高めたり、授業にナラティブをもたらしていくことは難しい。私はそのように解釈をしています。これ、大切なことですよね。
教育に生成AIを活用しようとしている方に特に読んでいただきたい論文です。
2編目は現職派遣で中学社会科教員の北村優介さんとの共著論文です。
彼との関係は長く、派遣院生で入学する何年も前から榊原研究室を訪ねてくれていました。これまでの一斉型の授業から自分の社会科授業を変えていこうとのモチベーションで、「学習者主体のICTを活用した協働的な学び」を研究していました。その中で中学校社会科をフィールドに、批判的思考を育成するクラウド教材開発の研究を行いました。
この研究は視点がとても重要で、社会科のこれからのあるべき姿を描く研究にもなったのではないかと思っています。知識理解を詰め込む暗記中心の社会科の行末は、皆さんが推察される通りです。生成AI時代に暗記教科としての社会科をこのまま続けるのであれば、社会科の教科としての存在価値は下がっていくことを懸念しています。
だからこそ、社会科はリテラシー教育も含んでいく必要があると思っています。リテラシーとはいってもいろいろあるのですが、とりわけ社会科は批判的思考との相性がいい。「社会科を頑張って学んでいるから批判的思考が高いよね」そんなことが言われるような学習過程にしていかなければなりませんし、それを導く教材の開発も必要です。本研究はそれを中学社会科の実践の場で形にしたものです。
ゼミ生らの拙稿ですが多くの方に読んでいただければ幸いです。
1) 飯田翔大・中川哲・榊原範久(2026)生成AIを用いて作成した教材に対する現職教員の評価と教育利用の可能性.日本教育工学会論文誌,50(1):165-176
2) 北村優介・榊原範久(2026)中学校社会科において批判的思考態度を育むクラウド上の相互評価を導入した教材の開発.日本教育工学会論文誌,50(1):193-204

