のりさんの研究室

上越教育大学 榊原範久のブログです。

ゼミの選択

新入生のM1にとって、ゼミの選択はいい意味で大きな悩みのタネです。

「どの先生も魅力的で迷います」(発話ママ)

M1の新入生がそのように話をしていました。

ありがたいですね。

 

確かにどの指導教官につき、どのゼミに入るかは需要な選択です。

どのゼミに入るかで、2年間の活動や学びの内容が大きく変わります。

人によっては、大学院修了後の教員人生すら変わるのではないかと思います。

 

今日はゼミ紹介を兼ねた「学校支援プロジェクト説明会」が講堂で開かれました。

どのゼミのブースもM2の皆さんがゼミの特徴をしっかり発表していました。

 

来週からゼミへの加入が始まります。

榊原研究室にも、大学院生活を通じて成長したいと思っている院生が来てくれることを願います。

https://sakakibara-lab.jimdofree.com/

 

 

 

講義 教科におけるICT活用論

大学院の科目で「教科におけるICT活用論」を担当しています。

選択科目で、この科目に興味のある院生だけが履修する講義です。

 

全15コマ、全てICT活用分野の理論と実践で詰めれるので、私としてはやりがいのある講義です。

 

今年は履修した院生に特徴があります。

昨年度は全てM1の受講生だったのですが、今年はM2が大半を占めています。しかも、単位として認められる(私が所属する領域の)院生だけでなく、他コースからも5名の受講院生がいました。

 

受講理由を聞けば、8割の院生は

「昨年度はこの同じ時間に行われている赤坂真二先生の学級経営の講義をとっていたので。」

という。なるほど、やはり人気大学教員は違う。

 

一方、他コースからの受講者は

「M1の頃の榊原先生のオムニバスの講義が90分ずっと面白くて、受講しました。」

思わず、ありがとうございます、と院生に頭を下げました。

 

理由は何にせよ、昨年度中に単位を取り終わることができたにも関わらず、あえてM2になってこのICT活用論を受講しようとするその姿勢が素晴らしい。

また、M2になると、学びの意味や捉え、学ぶ姿勢が変わってくるので、この大半がM2を占める講義もまた面白い。

 

さて。

本日の講義の中で、院生たちが一番の真剣な表情を見せたスライドがこちら。

真剣に、深刻に考えている様子でした。

経済協力開発機構(OECD)(2016)
「21世紀のICT学習環境 -生徒・コンピュータ・学習を結びつける-」,明石書店. より引用

この文献に私が出会ったのは2017年ごろだったと記憶しています。

まだGIGAスクール(2021)前で、他国に比べICT環境整備が圧倒的に遅れていた当時の日本の教育現場に警笛を鳴らすかのような表現です。

 

「もはや周囲の経済的、社会的および文化的な生活に十分参加できないことになる」

 

これは、日本国憲法第25条「生存権」の一節みたいで、それが侵害されることを指摘しているように感じませんか。ICTは私たちの生活にはなくてはならないもので、それを活用できなければ、それは普通レベルの生活さえ脅かされるようになるとも捉えられます。

 

私はこの一文を読み、ショックを受けました。

当時は、どちらかというと社会科教育に研究の軸足がありました。

この文献との出会いは、その軸足を教育工学へと移すきっかけの一つとなったのでした。

 

今日の院生たちの意欲的な姿を見て、来週からこの講義「教科におけるICT活用論」を気合い入れて取り組もうと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

信州大学にて 佐藤研究室と合同ゼミ

先週の話になりますが、7日(金)にゼミ生と一緒に信州大学へ行ってきました。

 

目的は合同ゼミの実施。信州大学の佐藤研究室(佐藤和紀先生)と上越教育大学の榊原研究室の合同です。

 

お互いに、教育実践研究に熱心に取り組んでいる研究室(だと勝手に思っている)ですので、話は合うだろうな、くらいに想定していました。

 

しかしその想定を超えたゼミとなりました。初対面とは思えないくらいに活発な議論で盛り上がったわけです。

 

司会進行は各ゼミ長が共同して務めました。

佐藤和紀先生の始まりの挨拶からスタートです(写真)。

まずは自己紹介を兼ねたワークショップを行いました。セミナー室のあちこちで小グループができ、自己紹介と研究の興味関心を挙げながら相互交流が始まりました。ゼミ生たちの話の勢いが止められずあっという間の20分。

 

次にこれまでの研究成果の発表と検討を4、5名ずつのグループに分かれて行いました。

多くのゼミ生は学会発表を経験しているので、各自が個人研究のネタを持っています。学会発表のスライドや投稿論文の原稿などを用いました。それを叩き台に研究の検討会です。

一人20分程度の持ち時間でしたが、交代の合図のタイマーが聞こえないほどに議論が盛り上がっていました。

 

合同ゼミの後は懇親会。こちらもまた盛り上がりました。コロナ禍で忘れかけていた学生の熱のある飲み会を体感しました笑

 

実は、私と佐藤先生の仲は長いものではありません。昨年度の2月にセミナーでご一緒したのがきっかけでした。

ただ、お互いの論文や著書の中で知り合っていました。私はこれまでに何度も佐藤先生の著書や論文を引用しています。大変多くの学びをもらっていました。そして教育工学の分野の同世代の研究者で、精力的にご活躍されている方として、尊敬していました。そんな佐藤先生ご自身も、榊原の論文を読んだことがあったとのことでした。そして、お互いのホームページやブログを調べ、どんな人物かを事前にリサーチし「会おう」という運びになりました。

 

今回の合同ゼミは「研究」が繋いだ縁で実現しました。研究の面白さをまた別の側面から感じた1日でした。次回は上越がホストになって合同ゼミを開催します。

信州大 佐藤研究室・上教大 榊原研究室 合同ゼミ




インターネットの付き合い方 〜学校保健委員会で講演〜

小学校の学校保健委員会の講師としてお招きいただき、参加しました。

 

タイトルは「自分と仲間を守るインターネットの付き合い方」


2部制で行い、前半は子ども&保護者の部、後半は保護者全体の部。

 

対面での実施です。

最近、オンライン研修に逃げていたので、久々に汗をかく講演でした。

また、主に教員を対象にした研修に取り組んできたので、子どもに対する講演はさらに久々です。

でも、不思議なもので、しばらくすると「演じ」始める自分を感じました。

小学生の心に落ちる話し方、間、リアクション、ジョーク。

かつて6年間小学校の先生をしていましたので。

まだいけそうです笑

 

さて、参加した小学生は、一人一台のタブレットを持ち寄って参加。
私の出すクイズや問いかけに、一人一人が意見を提出します。

そして、リアルタイムに私がピックアップした意見をスクリーン上に投影しながら、それにツッコみ入れながらの、全員参加の学校保健委員会でした。

みんなが楽しそうに、そして時に真剣に学ぶ姿が見られてよかったです。

 

 

私は基本的に小中学生ネット推進派です。
どのように付き合えば失敗を減らし、便利さを享受して、幸せになれるかという視点を大切にしています。


それで「可能性は無限大、ルールを守って挑戦しよう!」と話をします。

 

学校の先生からすると「ネットの危険性やトラブルなど厳しい話をもっとしてよ〜」という感じだったかもしれません。

 

期待に添えずすみません笑

 

インターネットの魅力や可能性を語ると、子どもたちは目を輝かせて話を聞きます。

一方で「インターネットを使う約束」をトラブル事例を元に話をした時は、真剣に話を聞きます。

この両方を伝えることが大切なんですね。

 

 

子どもたちは失敗します。

失敗するからといって「排除・禁止」という対処法で問題解決を試みることは、彼らの可能性の芽を潰し、成長を妨げます。

 

子どもたちは失敗します。

日常でもネット上でも。特に、ネットは軽はずみの行動が取り返しのつかない失敗に繋がる可能性も秘めています。その部分はしっかりと事前に指導し、さらに子どもをトラブルから守る仕組みを保護者や大人が提供する必要があります。

 

子どもたちは失敗を糧に成長します。

 

Society5.0と呼ばれる超スマート社会が到来しています。
インターネットを土台にした社会の進化は不可逆的です。
インターネットをフル活用することを前提にして、どのように付き合うことが適切なのか、それを今後も考え続けていく必要があります。

 

これからの変化の激しい世の中を、子どもたちがインターネットの便利さを享受してたくましく生き抜けますように。

NITS・妙高市教育委員会・上越教育大学教職大学院コラボ研修

NITS(独立行政法人教職員支援機構)から支援を受け、妙高市教育委員会と連携してICT教員研修を実施している。


私のICT活用研究の一環でもあり「教育委員会・学校・大学の三位一体の協働の実現」を同時に目指している。


対象は、市内の小中総合支援学校の教員約230名。全員参加!


各学校の教員は、在籍校からオンライン接続。
講師役の私も、研究室からオンライン接続。
指導主事も、市役所からオンライン接続。


これだけ聞くと大規模オンライン研修と思われる。

こんな大規模に一成接続したら個々のモチベーションは低くなる。

研修効果もあまり期待できない。


しかし、本研修では、大規模研修の課題を解決するため、特別な仕組みを盛り込んで実施している。


研修の仕組みは

①講師(大学教員)が、各校の代表者(今回は情報主任や研究主任)に対してオンライン研修会を実施。少人数のため講師との直接質疑応答も可能。研修会の様子はzoom録画。

②各校の代表者は教育委員会の指示で、各校で伝達校内研修を行う。講師が作成したプレゼンデータ(著作権に配慮し、一部削除)を共有し、それを用いて各校で代表者研修が自分の言葉で再現する。伝達校内研修前にもう一度振り返りたい代表者のために、①のzoom録画データを共有。

③校内研修を受けた教員が、学んだ内容を生かして研究授業を行う。その時の写真や動画をもとに、大学教員が専門的に授業分析し、それを研修の題材にしてプレゼンを作成する。次年度に①の研修会を実施する。

今年はこの研修の2サイクル目にあたる。


今回のプレゼンの資料は、妙高市内でICT活用に積極的に取り組んでいる教員の授業写真や動画をもとに研修スライドを作っている。


この教員研修の仕組みのねらいは3つある。
・各学校に、ICT活用のリーダー・校内研修リーダーを育成
・身近で頑張っている教員の写真や動画を使って解説することで親近感やICT活用の切実感を実感
・研修効果を低減させずに、教員の出張を無くし、働き方改革

この研修の仕組みの実現には、教育委員会の存在が大きいです。
大学教員が代表者研修を実施して「この後、校内研修で伝達講習をお願いします」と頼んだところで、実際の実施は難しい。


しかし、ここに教育委員会が入って、「伝達講習をお願いします。実施したら教育委員会に報告してくださいね」となると実施率は大幅に上昇する。

教育委員会と学校のつながりは強い。大学教員はその力がない。

大学教員には専門性がある。教育委員会の指導主事にその専門性を求めることは難しい分野もある。

学校の教員には実践力がある。そして子どものことを一番知っている。

それぞれの長所を引き出し、「教育委員会・学校・大学の三位一体の協働」によってより効率的な校内研修を実現することを目指している。


せっかくのGIGAスクールの端末や環境を生かさない手はない。


今後もこの研修方法を他の自治体で拡大していきたいと考えている。

 

本研究の論拠は以下の論文です。今月発表予定です。

・小林龍柱,榊原範久,「オンラインシステムを部分活用した三位一体の拡散型教員研修プログラムの開発と評価~ICT活用をテーマとした教員研修の事例~」,日本教育工学会論文誌,第45巻3号, 日本教育工学会., 2021(印刷中).

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オンラインシステムを活用した三位一体の拡散型教員研修プログラム

 

妙高市情報部会研修会

GIGAスクール構想に伴い、市内12小中学校で1人1台の端末と大型ティスプレイの設置、大容量の高速インターネット接続が可能になって、授業は大きく変化しています。

皆さんの学校の学習環境はどのように変化したでしょうか。

 

今日は妙高市の情報部会の研修会に参加しました。
小学3年生の社会科の授業で、スーパーマーケットの学習単元です。


授業では主に「ロイロノート・スクール」を使ってスーパーマーケットで調べた記録と写真を共有していました。

【ロイロノート・スクール】1人1台GIGAスクールに最適な授業支援クラウド


スーパーマーケットの工夫が,客とスーパー側にそれぞれどのようなメリットをもたらしているのかを多面的に考えて、ロイロノート・スクールを使ってプレゼンしていくという流れでした。


今日の授業を振り返ると、細かな良い部分はたくさんあったのですが、まとめて言うならば、「ICTのメリットとデメリットを考慮した上で、ICTと黒板の共存できていた」ということです。


例えば「学習のめあて」や「学習の方法」、「まとめ」、「主題の写真」などは黒板に示したり板書したりして、授業中に常に子どもたちが確認できるようにしていました。またノートに記述することとタブレットに記述することも適切に分けて行っていました。


一方で、「学習者の意見の共有」や「プレゼンの作成・発表」はICTを使って行っていました。使用を始めて3ヶ月の3年生が,かな入力のタイピングを行っていたのは日頃からの積み重ねの証です。


既存の学習ツールとICTの「共存」のイメージを,教師がどのように授業デザインに描けるかが重要です。学習記録の共有や保存などICTのメリットが際立つ部分で使用することですね。


授業後の協議会は活発な議論がなされました。さすが情報主任の研修会です。

また,M1の院生を帯同して行きましたが,彼らが協議会で積極的に発言していた姿が見られたことは個人的に嬉しかったです。

情報主任の皆さんがやる気になって帰っていかれたようです。

GIGAスクール構想で整備された学習環境を最大限活かせるように今後も研修会や講演を通じて伝えていきたいと思います。

新しい教科書に、新しい教材

新しい年度が始まりました。

期待に胸を膨らませ、今年度はどうやって授業をしていこうか、と考えられている先生も多いことと思います。


中学校は新しい学習指導要領が全面実施となり、教科書が一新されます。

 

それに伴って授業を「主体的・対話的で、深い学び」に変化させていく必要があります。

 

新しい教科書には、新しい教材が必要です。新しい学習指導要領の内容を反映した教材が望ましいです。

 

本日から、私が監修した教材(公民、歴史、地理)の教師用見本が配布されます。

 

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日本文教出版の教科書をご採用いただいている自治体の全中学校に入ります。

 

教材の本誌は問題を厳選しています。教師用の付録には、私が作成した毎時間分の授業ワークシートが付いてきます。その他にもこの付録には魅力的な教材、素材が満載です。

 

ぜひ、手に取って、検討いただければと思います。

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