日本社会科教育学会の学会誌「社会科教育研究」に論文が掲載されました。研究に協力いただいた皆様、ありがとうございました。
日社学の論文誌に掲載されるのは初めてです。
この論文誌に論文掲載されることは一つの目標でした。偶然にも巻頭ページから載せていただいて、なんだか恐縮です。
論文を読んでいただければ幸いです(J-stageで公開されると思います)。中高の社会科の先生にお勧めしたい内容です。本論文で開発した「4Cチャート」を一度使ってみてください。効果に驚かれると思います。
研究の経緯と論文の内容について簡単に紹介します。(論文の内容については、要約しています。論文では詳しく、難しいことを難しく書いています笑)
この研究のリサーチクエスチョンは、
・なぜ、資料を読めない生徒がいるのか?
・なぜ、複数の資料を組み合わせて資料を読めない生徒が多いのか?
という中学社会科教員時代の単純な疑問と指導の壁です。これが出発点でした。
ここでいう資料とは、グラフ、表、地図、写真、風刺画、相関図など、社会科の教科書で一般的に扱われる類の資料全般を指します。
私(中学校社会科教員)は資料集を開くと、複数の資料を見ながら、読み取れる内容やまとめた結論を述べることができます。社会科教師であれば当然です。生徒たちの中でも学力の高い生徒は、同様に複数の資料から結論を述べることができます。
確かに複数の資料から結論を導出することは難しいのかもしれません。しかし、一つの資料であっても読み取りができない生徒はいます。
資料の読み取りが苦手な生徒に言わせると、「たくさん数字とか文字とか情報があってわかんない」だそうです。それもまたなるほど。
この状況を解決する鍵は思考の手順のような「思考プロセス」にあるのではないかと仮説立ててみました。
仮に、種類の異なる3、4種類の資料があるとします。例えば、グラフ、風刺画、相関図、地図など。
まず、一つ目の資料について、
①重要と思われる数値や言葉などを「見つける」ことをします。
②次に、①で見つけた数値や言葉などの意味を「考える」ことをします。
③そして、②で考えた事柄から類推して、共通項を「つなげる」ことをします。それによって複数の資料から根拠を得ます。
④最後は、「結論づける」これまでの読み取りを基にまとめの意見を書きます。
①から④の 思考プロセスを辿ることによって、資料の読み取りを行います。このプロセスは、「批判的思考の構成要素とプロセス」(楠見,2015)から着想を得て、社会科の資料活用場面の思考プロセスに合わせて改良したものです。
この思考プロセスを組み込んだ思考ツール「4Cチャート」と称して開発し、実践して評価しました。また、小中学生における批判的思考の育成に関して詳細を述べている点も特徴です。
なるべく読みやすくまとめたつもりではありますが、学術論文というと敬遠される現場の先生がいるのではないかと思います。今後は、学会誌に掲載いただいたことを支えに、現場で広く活用していただけるよう研修会や書籍等で発信してきます。
また、本研究に関して興味のある社会科の先生がいらっしゃいましたら、私へ直接メールでご連絡いただけたら対応いたします。メールアドレスは、上越教育大学 榊原研究室のHPを検索してください。
榊原範久・杉山立・大島崇行:資料活用における批判的思考を育成する思考ツールの開発と評価,社会科教育研究,138,pp.1-13,日本社会科教育学会,2019.